決済手段の選択肢と売上への影響:ECサイト運営者のための解説
この記事は2024/04/01に作成されました。
EC サイトを制作・運用する上で重要なのが決済です。
売上に対して、商品の魅力やサイトの UI, UX はもちろん重要ですが、決済手段も直接影響するのは間違いありません。
今回はそれら決済種別の特徴や売上への影響について解説したいと思います。
代表的な決済種別
様々な決済手段が存在しますが、代表的なものは次のようなものでしょう。
- ・銀行振込
- ・クレジットカード
- ・コンビニ払い
- ・電子マネー
- ・代引き
- ・請求書払い
銀行振込
受注発生後、 EC サイトから案内した口座へ顧客が振込を行う決済方法です。
EC システムに決済システムを組み込まなくても口座が用意できれば利用できるのが強みでしょう。
また、決済手数料を顧客側負担にすることができる上、キャンセル時まで実際の決済が発生しないため、無駄な手数料も抑えられるメリットがあります。
一回で振り込める上限額も大きい部類です。
ただし、受注が発生した後、実際の振込が行われないと受注が確定しないため、運営者・顧客双方にとって手間のかかる決済方法と言えます。
さらに EC システムと連携していない場合、消込作業に多くのコストがかかることになるかもしれません。
銀行によっては振込情報を取得できる API を提供している場合もありますので、 EC サイトの規模やスタッフの状況によっては自動化を検討しても良いでしょう。
代引き
配送業者が料金の回収もまとめて行う決済方法です。
顧客からしてみれば実際に商品が手元に届くタイミングで支払いをするので安心感があるとも言えます。
手数料の負担割合を運営側がとるか顧客がとるか、もしくは割合で折半するかのコントロールもできます。
しかし、当然ですが配送が存在しないデータ販売では用いることができません。
さらに、顧客からしてみれば置き配や配達ロッカーなどの選択肢が使用できなくなるといったデメリットもあります。
クレジットカード
クレジットカードを用い、その場で決済を確定・もしくは与信を確保できる方法です。
発注と同時に顧客の支払い能力について審査が下り、問題なければその場で売上が確定します。
ほぼ全自動かつ、最速で決済が完了する方法なので、 B to C EC サイト決済におけるディファクトスタンダードと言えるでしょう。
反面、本人でなくとも情報さえ知っていれば誰でも決済できてしまう方法なので、仮に情報が漏洩した時のリスクが最も重い決済方法と言えます。
また、万人が扱える方法ではないのでターゲットによっては代替手段を用意しないと売上の減少に繋がるでしょう。
そして法的に禁止されてはいないものの、ほとんどのクレジットカードは規約によって手数料を顧客負担にすることを禁じています。
自ずと運営側が手数料を負担することになるので予想外の費用が嵩むかもしれません。
ちなみに、クレジットカード決済を導入する場合、ほとんどのケースで後述する決済代行会社や ASP サービスを使用することになると考えられます。
これらサービスを使用した場合、基本的には EC サイトはクレジットカード情報にノータッチで決済を完結することができるからです。
これを「カード情報の非保持化」と言いますが、カード情報を保持する場合の「PCI DSS準拠」と合わせ、割賦販売法によって義務付けられた対策となっています。
違反したところで罰則はないものの、情報流出リスクは大きくなることから相応のデメリットが発生するでしょう。
使用するサービスにもよりますが、自身の EC システムでクレジットカード情報を保持しなくても
- ・一旦与信だけ確保した発注に対する請求
- ・与信の解放、返金対応
- ・定期決済
- ・過去に同サイトで使用したクレジットカードで決済を行う
といった機能は実現可能であるケースが多いので、決済代行会社や ASP サービスを利用するのが理にかなっています。
コンビニ払い
コンビニに設置してある端末を用いて顧客が振込を行う決済方法です。
メリット・デメリットは銀行振込と似ていますが、ほぼ確実にECシステムとの連携が必須となります。
そのため、裏を返せば消込作業などの管理コストが低く済む可能性が高いです。
ただし、振込先に使用する情報は発注ごとにシステムから払い出されるため、それらの情報をシステムから確実に顧客へ伝達する必要があります。
キャリア決済
主に携帯電話のサービスを提供する通信会社(キャリア)が利用者に請求する通信費に含む形で決済を行います。
オンラインで決済が完結する上、クレジットカードなどが使用できない顧客でも利用可能な決済方法です。
デメリットとしては、まず決済手数料がクレジットカードなどより高めに設定されている点が挙げられます。
また、一度に決済できる上限額も低い部類なので、高額な商品を販売する EC サイトには不向きです。
電子マネー
顧客が所有している電子マネーを用いて決済を行います。
事前に顧客が支払い済み(もしくは何らかの形で獲得)のポイントを使用して決済が行われるため、収益の回収リスクが低いことが特徴です。
ただし決済ごとに運営側へ手数料がかかる場合がほとんどなので、クレジットカードのように予想外の費用が嵩むかもしれません。
収益にはあまり関係ありませんが、特有のデメリットとしては、支払った人物の個人情報と決済情報がほとんど紐づかないため、誰が実際に支払いを行ったのか追跡しにくい点があります。
請求書払い
掛売り取引が一般的な B to B においてよく選択される後払い決済です。
販売・納品の都度決済を行うのではなく、一定期間の請求をまとめることができるなどのメリットがありますが、なにより B to B はこの決済方法を前提としているケースが多いことが一番のメリットです。
しかし、 EC サイトなどのシステム連携がないと、各種経費業務は高コストになりがちです。回収リスクも高くなる傾向があります。
具体的には、
- ・請求書の作成、送付
- ・相手が請求額を支払えるかどうかの与信調査
- ・請求に応じない相手への催促や督促、法的措置
などが必要になるでしょう。
コスト・手数料視点での分類
ここまでは一般的な分類を紹介してきましたが、それらの分類はあくまで顧客が選択できる決済手段としての分類でした。
ただし、実際に EC サイトで決済を導入する場合は、決済手段をひとまとめにするサービスを利用するケースが多いでしょう。
ここではその状況ごとに解説を行います。
EC システム未連携(銀行振込・代引き・請求書払い)
銀行振込、代引き、請求書払いなどはECサイトシステム外で決済を行うため、ECサイトとシステム連携することなく運用することができます。
また、これらの手数料も顧客負担にすることができるため、その意味では手数料を0にすることが可能でしょう。
一方で、支払い状況の管理や消込作業、支払いに応じない顧客からの回収業務などの作業コストが高くつく可能性があります。
もちろん、後述のサービスの一環としてこれらの支払い方法を自動管理させることはできますが、その場合は手数料や初期導入費、サービス使用料などがかかるでしょう。
決済代行会社
独自の EC サイトを制作・運用する際に真っ先に候補に挙がるのが決済代行会社です。
決済代行会社は様々な決済方法をまとめて提供してくれるケースが多いため、入金サイクルや決済履歴情報などが決済手段ごとにバラバラにならず一元管理できるのが魅力的です。
また、決済種別によっては未回収リスクを軽減してくれたり、決済に関わる顧客とのコミュニケーション業務を肩代わりしてくれたりすることもあります。
代わりに必ず何らかの形で使用料がかかることになるでしょう。
例えば弊社で開発経験のある決済代行会社である
- ・ZEUS
- ・PAY.JP
- ・Stripe
- ・GMOペイメントゲートウェイ
- ・ROBOT PAYMENT
のクレジットカード決済を導入した場合で比較すると、
代行会社名 | 初期費用 | 月額費用 | カード決済手数料 | 与信料 | 売上処理料 | 取消料 | 電子決済以外の決済手段 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ZEUS | 0 円 | 3,000 円~ | ~3.50% | 0 円 | 30 円 | 0 円 | 〇 |
PAY.JP(ベーシックプラン) | 0 円 | 10,000 円 | 3%(VISA, Mastercard), 3.6%(JCB, American Express, Diners Club, Discover Card) | 0 円 | 0 円 | 0 円 | × |
PAY.JP(プロプラン) | 0 円 | 0 円 | 2.59%(VISA, Mastercard), 3.3%(JCB, American Express, Diners Club, Discover Card) | 0 円 | 0 円 | 0 円 | × |
Stripe | 0 円 | 0 円 | 3.6% | 0 円 | 0 円 | プランにより変動 | 〇 |
GMOペイメントゲートウェイ | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 〇 |
ROBOT PAYMENT | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 要問合せ | 〇 |
のようになっています(2024/04 現在)。
上記の例で一部が「要問合せ」となっているように、決済代行会社によっては EC サイトの規模や特徴に合わせて最適なプランを提案してくれる場合もあります。
導入を検討している場合、まずは問い合わせてみるといいでしょう。
EC モール
独自の EC サイトを制作するのではなく、すでに存在する巨大な EC サイトに出品する方法です。独立した店舗を構えるのではなく、市場や商店街のスペースを借りて出店するようなイメージです。
代表的な EC モールは楽天、 Amazon 、 Yahoo ショッピングなどが挙げられます。
サイトを独自開発する必要がなく、決済代行会社との連携も不要なので開発にかかるコストは大きく削減できるでしょう。
さらに EC モールというプラットフォーム自体に大量の顧客が根付いているので、そもそもの収益拡大が見込めます。
反面、手数料は決済代行会社を利用したときより高額になるケースがほとんどです。
また、基本的な物販フローから外れるような特殊な販売は対応が難しく、サイトのデザインなどの裁量もほぼありません。
ASP サービス
EC モールのように決済部分を全て丸投げできる反面、独自サイトにカートフロー部分を埋め込む形を取るのが ASP サービスです。
代表的な ASP サービスは BASE 、 Shopify 、 STORES などが挙げられます。
独自サイトに埋め込むことができるので、ある程度はサイトとしての独立性を保つことができるでしょう。
導入コストは決済代行会社と連携する場合に比べ、簡便かつ短時間で済む可能性が高いです。
デメリットとしては、手数料などのランニングコストは決済代行会社を利用したときより高額になるケースがほとんどです。
ただし、 EC モールよりは安いことが多いので、様々な面において EC モールと決済代行会社の中間の特徴を持っていると言えるでしょう。
まとめ
EC サイトにはつきものの決済ですが、ここまでに紹介した通り選択肢は多種多様です。
これだけ沢山の選択肢があるということは、裏を返せば EC サイトの条件ごとに適する決済方法は違うということです。
実店舗でもあえてクレジット決済に対応していなかったり、現金が使用できなかったりするように、 EC の世界でもサイトごとに最適な決済手段を選択する必要があるでしょう。
弊社では決済代行会社と連携したフルスクラッチ開発を得意としていますが、場合によっては ASP サービスの導入を勧めるケースもあります。
最適な決済導入の相談も込みで、独自の EC サイトを 1 から作成してみたい場合はぜひお問い合わせよりご連絡いただければ幸いです。
プログラマー/N.Go